エアコンの冷暖房機能は我々の快適な生活を支える重要な要素です。
しかし、その仕組みを理解している人は少ないかもしれません。この記事では、エアコンの仕組みと普段の使い方について解説します。
1 エアコンの基本原理
1-1: 冷房の仕組み
暑い夏にエアコンの冷房スイッチを入れると、室内機の吹き出し口から冷たい風が出てきて部屋が涼しくなります。この冷たい空気はどのようにして作られるのでしょうか。それは、熱交換という作用によって作られます。部屋の暖かい空気から熱を奪い取り、熱を奪い取られた空気は冷たくなるのです。では、奪い取られた熱はどこに行ったのでしょうか。冷房時に室外機の前から熱い空気が出ているのを感じたことがあると思いますが、それが、室内の空気から奪い取られた熱なのです。
1-2: 暖房の仕組み
では、暖房の場合はどうでしょうか。答えは冷房の時と全く同じです。但し、熱を奪い取る場所が違います。暖房の時は、室外の空気から熱を奪い取り、その熱を室内機からへやに放出しているのです。つまり、室内機と室外機の役割が入れ替わった状態になります。そこで、冬の冷たい室外の空気に奪い取る熱があるのかと思われるかともいらっしゃるかもしれませんが、例えば、外気温が10℃の空気から10℃分の熱を奪い取ると0℃になります。この奪い取った10℃分の熱を室内の空気に与えると暖房になるのです。
2 冷却(冷凍)サイクルの概要
熱交換の作用(専門的には冷凍サイクルと言います)について説明します。
2-1: 蒸発器(熱交換器)の動作
空気の夏を奪い取る作業はどのように行われるのでしょうか。分かりやすい例えをすると、夏の暑い日に行う打ち水を行うと少し涼しくなる経験をしたことがあると思います。これは液体の水が蒸発する際に周りから気化熱を奪う為、涼しくなるのです。これと同じ作用を室内機の蒸発器(熱交換器)で行います。この蒸発器はどこにあるかと言いますと、室内機のカバーを開けてフィルターの奥にある銀色の細いフィンがたくさんついたパネルがそうです。この蒸発器に室外機から送られてきた液体の冷媒ガス(俗に言われるフロンガス)が、蒸発器の中で蒸発して気体になります。その時打ち水と同じように蒸発器に接している空気から気化熱を奪い取るのです。気化熱を奪われた空気は冷たくなって室内機の吹き出し口から出てきます。
2-2: 圧縮機と凝縮器の動作
次に、蒸発器で気体になった冷媒ガスは配管を通って室外機に戻ってきます。戻ってきた気体の冷媒ガスは圧縮機という機械で圧縮して高圧の期待になります。この圧縮された高圧の冷媒ガスは室内の奪った熱で高温にもなっています。この高温高圧の冷媒ガスを凝縮器(熱交換器)に送られます。この凝縮器は室外機の背面にある銀色の細かいフィンがついたあのパネルです。凝縮器に来た気体の冷媒ガスは凝縮器に接している空気に熱を放出します。この時熱を奪われた気体のガスは液体になっていきます。イメージとしては鍋の蓋の裏に水滴がつくのと同じ状態です。こうして熱を奪われた液体の冷媒ガスは再び室内機に運ばれて行きます。この一連の動きが冷凍サイクルと言われる動作です。
3 冷媒とは
3-1: 冷媒の役割
冷媒とは、先ほどの奪い取った熱を運ぶ役割をしているのが冷媒です。この冷媒は先ほどの冷凍サイクルの中で、完全に密閉されています。
たまに、エアコンの効きが悪くなったのでガスを補充してもらったという話を聞きますが、正常なエアコンではガスは絶対に減りません。ガスが減るということは、この冷凍サイクルのどこかで不具合があり漏れているので、漏れている原因を直さないとまたガスが減ってきます。
たまに、エアコンの効きが悪くなったのでガスを補充してもらったという話を聞きますが、正常なエアコンではガスは絶対に減りません。ガスが減るということは、この冷凍サイクルのどこかで不具合があり漏れているので、漏れている原因を直さないとまたガスが減ってきます。
3-2: 冷媒の種類
冷媒によく使われるフロンガスですが、特定のガスを指しているのではなくて、よく使われる冷媒の総称の様な感じで、CFC・HCFC・HFC等の種類があり家庭用エアコンには、約10年前まではR410Aが主流で、それ以降はR32がほぼ使用されています。家庭用以外では炭酸ガスやプロパンガスなども冷媒として使用されることがあります。これらのフロンガスはオゾン層の破壊や温室効果があり大気中に放出することは世界的に禁止されています。
4 エアコンのお手入れ方法
これまでエアコンの仕組などについて説明してきましたが、次に普段のお手入れや使用方法について説明します。
4-1: 室内機のお手入れ
これまで、エアコンの仕組みは熱交換と言う説明をしてきました。つまり、エアコンを効率よく使用するにはこの熱交換がスムーズにできるようにすることが大切です。それは、フィルターのこまめなおそうじです。このフィルターは熱交換器の手前にあり、熱交換器等に埃をつきにくくしています。このフィルターが埃で目詰まりを起こすと、熱交換器に行く空気の量が減り熱交換の効率が悪くなります。エアコンの上部などに埃除けの為に不織布などのフィルターを付けているのを見かけますが、同じような理由であまりお勧めできません。最近はフィルター自動清掃機納付きのエアコンも多く販売されていますが、完全ではありません。ダストボックスの清掃やフィルターを取り外しての定期的な洗浄を行う必要があります。購入時お掃除機能付きなので掃除の必要はないといわれて購入したという話も耳にしますが、定期的な清掃は必要です。それでも長年使用していると、エアコンの内部は埃やカビなどにより汚れがたまってきます。そうなれば、専門業者による分解洗浄をお勧めします。エアコン洗浄スプレーなどが量販店などで販売されていますが、効果が少ないばかりか、事故なども発生しているのでお勧めはできません。
4-2: 室外機のお手入れ
室外機のお手入れは、室内機に比べてそれほど気にすることは少ないです。しかしここでも肝はやはり熱交換です。室外機には室内機の様なフィルターはついていません。なのでお手入れの頻度は少ないですが、この室外機の熱交換器が目詰まりすると効率が悪くなります。よく見かけるのが、ペットの毛や枯葉やゴミなどがついて目詰まりしている状態です。このようなときは、柔らかい刷毛やブラシでフィンの目に沿って優しく埃を落としてください。熱交換器のフィンはアルミで柔らかい為、荒っぽく扱うとすぐに曲がってしまいます。多少汚れていても、目詰まりがなければ問題ありません。
5 効率よくエアコンを使用する方法
5-1: 冷房の使い方
エアコンはつけ始めが一番電力を消費するので付けっぱなしの方が電気代が安くなるという話を聞いたことがないでしょうか。これは、正解でもあり間違いでもあります。まずつけ始めが一番電気を消費するという話は正解です。例えば、真夏の昼間に40℃近くまで上がった室温を28℃くらいまで下げる為に最大出力近くで運転し続けます。設定温度まで下がると低出力で温度を維持するだけの運転になります。なので、つけたままの方がよいという理屈ですが、温度を保つ低出力の運転といえども電力は消費します。誰もいない部屋の温度を維持し続けるのに使い続ける電力と、部屋の温度を下げる為に一時的に多く使う電力の差が問題です。あるエアコンメーカーの調べによると、気温や日当たり部屋の大きさなど様々な条件で違いはありますが、概ね30分以上の外出であればエアコンは消した方が電気代は安くなるそうです。また、帰宅時に部屋を早く冷やすためにリモコンの設定温度を最低温度まで下げて運転する方もいらっしゃいますが、ほとんど意味がありません。冷房運転が働いている時の吹き出し口の温度は設定温度とは関係なくほぼ一定の温度(10℃~18℃位)です。なのでまずは部屋の窓を全開にして熱い空気を外に出してから運転をするとエアコンの負担も減って、より早く部屋を冷やせます。
5-2: 冷房と除湿
電気代節約のために除湿運転をされている方はいないでしょうか。これも正解であり間違いでもあります。まず除湿の仕組みですが、冷房の為に熱交換器で空気の熱を奪います。この時熱を奪われた空気は余分な空気中の水分が結露水として取り除かれます。冷房時ドレンパイプというホースから水が出ていると思いますが、これが除湿された空気中の水分です。つまり通常の冷房運転でも除湿はされているのです。では、除湿運転とは何かと言えば運転制御の仕方です。通常の冷房運転よりさらに除湿をしたい場合どうすれば良いでしょうか。それは空気をさらに冷やせばより多くの結露水が取れます。しかし、それでは部屋が冷えすぎてしまいます。そこで再度適温まで温めて空気を出します。空気を再加熱するのに冷房運転より電力をより多く消費します。次に弱冷除湿と言って、弱い冷房で除湿し続ける方法ですが、室温と湿度のバランスがなかなか取りづらいですが、再加熱しないのでその分電力は少なくて済みます。メーカーや機種によってもいろいろな方法があるので、目的や用途によって機種選択の必要があります。
5-3: 室外機の設置
室外機の取り扱いですが、やはり熱交換がスムーズにできるようにすることが重要です。一番はスムーズな熱交換の為に室外機の前は解放されていることが大切です。設置場所によっては無理なこともありますが、すぐ前に壁があるような場所はできるだけ避けるようにしたいです。そのような場合は、風向を変えるルーバーを付けることにより解決することもあります。もう一点は直射日光が当たらない場所に設置するのもよいと思います。直射日光が当たるようであれば庇やよしず等で日陰を作るのも方法です。但し直射日光を避けるために周りを囲ってしまうのはよくないです。
まとめ
今回の記事を参考にエアコンの仕組みを理解したうえで、日ごろのお手入れやメンテナンス、設置について参考にして頂ければ幸いです。